9.繰り上がりのあるたしざん 1 補数

二桁以上の数を表すことができたので、繰り上がりのある足し算に移ろう。
まず「補数」という概念を説明しておく。補数とは、ある数に対していくら足りないかを示した数だ。普段の生活であまり使われる言葉ではないが、そろばんの計算では、とても大切な概念だ。
では、最も基礎となる数10に対する補数を考えてみよう。
まず、9の補数はいくつだろうか? 
10にいくつ足りないかを考えればいいので、答は1。
8ならどうだろう。簡単だろう。もちろん2だ。
同様に考えていくと10に対する補数は、全ての一桁の数で表せる。下の表がそれだ。

そろばんを習い始めた子どもたちがはまず始めにこの組み合わせを覚えることになる。
小学校低学年の子どもでも、両手の指を使って、考えると直ぐに分かる。指を2本曲げると、伸ばしたままの指は8本。4本曲げると、伸ばした指は6本になる。曲げた指と、伸ばした指の数は、その数と10の補数の関係になる。十個丸を描いて考えてもいい。隠した丸の個数と残った丸の数も同じ関係にある。
幼い子どもに教えるときは、補数という言葉は使用しない。それぞれの先生が「お友達の数」や「相手の数」と呼んだりしている。
8の補数は2であり、逆に2の補数は8になる。相手の数の補数は自分の数になる。太郎君のお友達は次郎君で、次郎君のお友達は太郎君といった具合で、分かりやすい。数字の世界では「私は友達だと思っているのに、相手は思っていない」ということは一切無い。
「8のお友達は?」「2」
「7のお友達の数は」「3」
「6の相手は?」「4」
「5の相手は?」「5」
このようなやり取りがおこなわれることとなる。

では補数を利用して足し算をやってみよう。
やり方を先に説明してしまおう。

◎方法 一の位で補数を取って10に繰り上がる。

まず分かりやすいものとして9の足し算を考えてみよう。9を足す場合、五珠と一珠4つ、一つの桁すべての珠を必要とする。一珠が一つでも入っていると、以前に説明したやり方は使えない。出来たのは0+9のみだった。
ここで「お友達の数」補数が登場する。9のお友達は1なので一の位で1を取ってから十に繰り上がることにする。十に繰り上がるとは、一つ左の十の桁に1をいれること。9を足すのに10を加えれば1多すぎるので、1を取ってから10を足すわけだ。このように考えると、左の足し算ができる。
9を足したければ1を取って10を足す
8を足したければ2を取って10を足す
7を足したければ3を取って10を足す
6を足したければ4を取って10を足す
5を足したければ5を取って10を足す
4を足したければ6を取って10を足す
3を足したければ7を取って10を足す
2を足したければ8を取って10を足す
1を足したければ9を取って10を足す

足し算が理解できれば、引き算に移ろう。ここでも、逆の操作をすればいい。
「一の位で補数を取って10に繰り上がる。」が足し算だったので、逆の操作は
「10を取って、一の位に補数を戻す」
これが引き算になる。
 すべて並べておこう。
1を引きたければ10を取って9を足す
2を引きたければ10を取って8を足す
3を引きたければ10を取って7を足す
4を引きたければ10を取って6を足す
5を引きたければ10を取って5を足す
6を引きたければ10を取って4を足す
7を引きたければ10を取って3を足す
8を引きたければ10を取って2を足す
9を引きたければ10を取って1を足す

 これらが10に繰り上がるときと、10から繰り下がるときの加減の基本となる。これも一覧表にしておこう。