15.小数と分数

「1を二倍にしてください」
「2です」
「その数をまた二倍してください」
「4になりました」
「では逆に、その数を半分にしてください」
「2に戻りました」
「また、半分にしてください」
「最初の1になりました」
「では、さらに半分にしてください」

 さあ、どんな数字が頭に浮かんだだろう。
私の頭に思い浮かんだ数字。0.5だった。そして、これをさらに半分にといわれたならば、0.25と答える。
この質問を、小学校時代をアメリカで過ごした知り合い(A君とする)に尋ねたところ、返ってきた答は2分の1だった。
1より小さい数を表すのには、二つの方法がある。少数と分数だ。1の半分は? という問いに対し、私は0.5と少数で答え、A君は分数で答えたことになる。もちろん、どちらかが間違いというわけではない。両方正解だ。
同じ数を表すのに方法が二つあるだけのことだ。一度、少数で考えると、そのまま少数で考えるのが普通だろう。1から順に半分にしていくと、
1 → 0.5 → 0.25 → 0.125 となる。
始めに2分の1と答えたなら、
1 → 2分の1 → 4分の1 → 8分の1 だ。
最初の質問に、小数と分数、あなたはどちらで答えただろうか。そして、どちらを好んで使うだろうか。
日本人は分数より小数を得意とする人の割合が圧倒的に多い。これは日本語の数の数え方が完全に十進法になっていることが影響しているといえる。
日本語の数には一桁進むごとに名前が付いている。一、十、百、千、万。万以降は四桁進むごとに億、兆、京、垓(がい)、𥝱(じょ)、穣(じょう)、溝(こう)、澗(かん)、正(せい)、載(さい)、極(ごく)、恒河沙(ごうがしゃ)、阿僧祇(あそうぎ)、那由他(なゆた)、不可思議(ふかしぎ)、無量大数(むりょうたいすう)となる。
万以降は四桁ごと、と書いたが、昔は一桁進むごとに万、億、兆と続いていた。そろばんで言うとすべての桁に名前が付いていることになる。
1より、小さいほうでも割、分、厘、毛と、十分の一ごとに位を表す名前がある。これも、絲(し)、忽(こつ)、微(び)、繊(せん)、沙(しゃ)、塵(じん)、挨(あい)、渺(びょう)、漠(ばく)と続く。
分数と違い、小数の考え方は十進法を基本としている。1は0.1が10集まった数であり、0.1は0.01が10集まった数である。十進法が崩れていなければ、そのままそろばんに表せる。
通常、そろばんで小数を表す場合、一の位の枠を指で押さえる。(指押さえ)
定位点のある桁を一つ選び、指押さえをする。その桁が一の位に決まり、その右が0.1、さらに右が0.01の位と決まっていく。

もちろん、指押さえをした桁の左は十の位だ。位が決まればそのまま数字を入れていけばいい。0.103なら0.1の桁に1を、0.001のけたに3を入れればいい。十の位に5、一の位に7、0.01の位に8を入れれば57.08が表せる。

十進法の考え方が崩れることが無いので、整数のときと同じように、小数もそろばんの上で表していけることが分かるだろう。
では、最後に問題を一つ出してみよう。
問題 定位点が一番右と一番左に付いた、13桁のそろばんがある。このそろばんを使って表すことのできる、最も大きい数はいくつだろうか? また、最も小さい数はいくつだろうか?

この問題は、どの桁を指で押さえるかで決まる。答は下の通りである。